不動産投資の良い持ち出し・悪い持ち出しとは?投資のポイントとあわせて解説


不動産投資における「持ち出し」とは、収支がマイナスになった場合、マイナス分を補完するために自己資金から負担するお金のこと。
持ち出しが続くことは赤字経営を意味するため、「不動産投資で持ち出しがあるのは絶対にNG」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、不動産投資を始めるためにローンを組んだ場合、ローン返済中の収支はマイナスになることがほとんどです。
ただし、最終的には不動産という実物資産を手に入れることができるので、「家賃収入により老後の収入源を確保できること」や「物件を売却すればまとまった額のお金を手にできること」を考えると、持ち出しありの不動産投資が一概にNGとは言い切れないのではないでしょうか。
そこで今回は、不動産投資における良い持ち出しと悪い持ち出しとの違いや、持ち出しありで不動産投資を行う際のポイントについて解説します。
「持ち出しが発生しても投資して問題ないのか知りたい」方は、参考にしてみてください。
不動産投資における持ち出しとは?
不動産投資における「持ち出し」とは、マイナス収支を補完するために自己資金から負担するお金のことを言います。
「持ち出し」が発生しているということは、収入を上回る支出がある状態です。
そのため、マイナス部分(ローン返済や管理費の支払いなど)を 自己資金から補填しなければならないのです。
資産を作り、増やすための投資なのに、なぜマイナス収支になり、持ち出しが発生してしまうのでしょうか。
持ち出しが発生する理由や、持ち出しありでも不動産投資を行うことにメリットはあるのか、詳しく見ていきましょう。
不動産投資で持ち出しが発生する理由
不動産投資では、家賃収入よりもローン返済や経費などの支払い額が大きくなると、補填するために自己資金からの持ち出しが必要になります。
持ち出しが発生する主な理由は、以下の通りです。
- ローン比率が高いため、月々の返済額が大きい
- 運用物件数が少ない(ワンルームマンション1戸のみなど)
- 運用物件の利回りが低い
- 管理費や修繕費、固定資産税といった経費が想定以上にかかっている
- 空室発生により家賃収入を得られない
- 経年劣化による修繕費の増加などで、収支状況が悪化した
特に持ち出しが発生しやすいのは、新築ワンルームマンション投資において、頭金をほとんど入れずにフルローンで不動産投資を始めたケースです。
利回りの低い新築物件においてローン比率が高ければ、ローン返済費を含めて出ていく金額の方が大きくなりやすい傾向にあります。
そのため、運用開始時からキャッシュフローがマイナスというパターンも多くなります。
ただし、持ち出しがあるからといってその投資が失敗だと決めつけるのは早計です。
不動産投資で得られる利益は、家賃収入だけではなく物件売却時の売却益もあります。
ローンの返済が終われば、資産である物件を手にできるため、一時的な持ち出しがあっても最終的なトータルリターンは黒字になるケースもあるのです。
不動産投資は、持ち出しの有無だけでは投資成功の判断ができないため、長期的な視点でキャッシュフローを見るようにしましょう。
持ち出しがあっても不動産投資を行うメリット
不動産投資で大切なのはトータルリターンであり、長期的に見たときにメリットがデメリットを上回るかどうかです。
以下の点をメリットに感じるのであれば、持ち出しが発生するケースであっても、不動産投資を検討してもいいかもしれません。
- 実際に物件を所有できる
- ローン完済後は家賃収入から経費を除いた大半を収入として得られる
- 物件の売却益を見込める
- 節税対策になる
- ローン付帯の団信により生命保険と同様の効果を得られる
投資に即金性を求めている方には、上記メリットは物足りなさを感じるかもしれません。
一方で不動産投資を「老後資金の積み立て」と考える方にとっては、持ち出しがあったとしてもこれらのメリットは魅力に映るかもしれません。
持ち出しは自己資金を減らす点においてはデメリットです。
しかし、最終的にデメリット以上のメリットを得られれば良いと思う方であれば、不動産投資をやる意義は十分あるでしょう。
良い(問題ない)持ち出しとは?
不動産投資において持ち出しがあったとしても、次のように一時的もしくは、計画的なものであれば投資を続けても問題ないでしょう。
- 設備の修理や交換などによる一時的な持ち出しである
- 運用開始時から数年間の持ち出しも考慮した上で資金計画を立てている
- 不動産投資を行う目的が明確である(資産性のある物件を所有する、節税対策など)
たとえば不動産投資の目的が「老後資金の確保」で、現役時代の信用力を活かしてローンを組んでいる場合、ローンの返済が終わるまで持ち出しが発生するケースがほとんどでしょう。
しかし、ローンの返済が終われば、経費を差し引いた家賃収入の大半を公的年金にプラスして得ることができると考えると、将来のためにコツコツ積み立てる感覚で持ち出しに対応できるのではないでしょうか。
投資の目的は何なのか、自身は何にメリットを感じているのか。長期的な視点で考えることは、その持ち出しが自身にとって良いものなのか悪いものなのかを判断する基準の一つになるのではないでしょうか。
悪い持ち出しとは?
一方で、単純に収支が悪化して持ち出しが発生し続けているケースは悪い持ち出しと言えます。
特に以下の状況にある場合は、投資計画の見直しをしたほうがいいでしょう。
- 立地が悪いため空室が続き家賃収入を得られない
- 物件のメンテナンスが不十分で借り手がつかない
- 管理費や修繕費などが上がり、固定費が想定以上にかかっている
上記は物件に何かしらの問題があるケースです。特に、賃貸需要が低い物件の場合、ローンを完済しても家賃収入を見込めない、売却しても利益が出ない可能性もあります。
まずは、物件そのものの資産価値を見直してみてください。将来的にも資産価値を見出せないのであれば、投資計画を見直し、物件の売却なども検討する必要があるでしょう。
持ち出しを減らす(なくす)には?
これまで「投資対象である物件に資産価値があるのなら、一時的な持ち出しがあっても許容範囲である」とお伝えしてきました。
とはいえ、赤字経営が続けば自己資金はどんどん減っていきます。極力持ち出しを減らしたい、なくしたいという方には、以下の対策をおすすめします。
- ローン比率を下げるために頭金を多く入れる
- 繰り上げ返済をする
- 収益性が悪い物件の購入を避ける
- 客付けに強い不動産会社と手を組む
- 自己資金と融資可能額に余裕があれば、複数物件を所有し家賃収入を増やす
- 空室対策にサブリース契約※を検討する(サブリースの契約内容は事前に要確認)
第一に考えたいのがローン比率を減らすことです。
不動産投資用ローンは住宅ローンに比べて金利が高いため、支払う利息も多くなります。頭金を多めに入れることで、支払う利息を減らし、キャッシュフローの改善をはかりましょう。
キャッシュフローの悪化の要因が空室である場合は、客付けに強い不動産会社に集客と管理を委託したり、サブリース契約を検討したりする方法もあります。
それでも収支が良くならない場合は、そもそもの資金計画に問題がある、もしくは物件そのものに問題があるのかもしれません。
赤字状態が続かないうちに物件を売却し、再度計画を練り直すのも一つの方法です。
※サブリース契約では、更新時期にかかわらず借地借家法第32条の規定に基づき賃料の減額請求がされる可能性があります。 また、借地借家法の規定により契約期間中にサブリース業者から解約することがありますが、オーナーからの解約に対しては「正当事由」が必要となります。
持ち出しありでも、長期で見ると老後の大きな資産になる事例
不動産投資の魅力は、実物資産である物件を所有できる点にあります。
ここでは、持ち出しがあっても長期的には老後の資産形成ができた事例を紹介しましょう。
物件:新築マンション(東京都杉並区)
物件価格:3,000万円
頭金:10万円
金利:年1.6%
返済期間:35年
間取り:1K(25㎡)
サブリース賃料:9万円※ローン完済後は7万円
管理費:8,000円/月
修繕積立金:2,000円/月
<注意点>
・サブリース契約は、一般的に数年おきに家賃の見直しが行われます。また、家賃の更新時期にかかわらず借地借家法第32条の規定に基づき賃料の減額請求がされる可能性もありますので上記シミュレーションでは家賃が減額される前提で記載しております。なお、サブリース契約を前提としているため、空室期間の発生は考慮しておりません。
・管理費や修繕積立金は、物件の経年劣化に応じて増額する可能性が高いため、ローン完済後は増額する前提で記載しております。
・設備等の修繕費は収支に含まれておりません。
上記のケースでは、ローンを組める現役時代に毎月1.3万円程度積み立てていくことで、ローン完済後には毎月5万円近い収入を手にできる計算です。
長く投資していけば家賃が下がったり、管理費や修繕積立金が上がったりする可能性はありますが、働けなくなる老後に毎月5万円程度の自分年金を受け取れることや実物資産を所有できるのは大きな魅力です。
持ち出しありで不動産投資を行う際のポイント
持ち出しありで不動産投資を行う際に重要なポイントは、計画性と信頼できるパートナー選びです。
不動産は実物資産であるため、きちんとメンテナンスを行っていたとしても、物件や設備の劣化は避けられません。そのためローン完済後に借入金の返済負担がなくなったとしても、年数経過により物件の管理費や修繕費の負担は増えているはずです。
先々の収支変動を考慮したうえで、綿密な資金計画を立てておく必要があるのです。
とはいえ、何もかも計画どおりにいくとは限りません。空室が発生したり、入居者とのトラブルがあったりすれば、その都度うまく対処する必要があります。
そこで頼りになるのが、信頼できるパートナー=不動産会社の存在です。予測できない事態にうまく対処するためには、良いパートナーの存在が欠かせません。
パートナー選びの際は、物件の購入から入居者の募集、部屋の管理まで、一貫したサポートを受けられるかどうかを確認してください。信頼できるパートナーがいれば、あなたの計画をうまく補完して長期の経営をサポートしてくれるはずです。
まとめ
不動産投資の持ち出しには、良い持ち出しと悪い持ち出しがあります。
良い持ち出しとは計画的または一時的なもので、トータルリターンはプラスになるケース。対して悪い持ち出しとは、収支が悪化して持ち出しが発生し続けているなど、計画外で長期的なものです。
どちらにしても、不動産投資の成功は長期的な視点で見なければなりません。
不動産投資を行う本来の目的は何か、不動産投資のどこにメリットを感じているのか。長期的な視点で考えたうえで、その持ち出しが自身にとって良いものなのか悪いものなのかを判断しましょう。
不動産投資の魅力は、働けなくなったときに収入源になる資産(物件)を所有できる点にあります。「現役時代にローンを組んでコツコツ積み立てておき、老後の収入源になる自分年金を作る」といった目的が明確なのであれば、計画的もしくは一時的な持ち出しであれば問題はないでしょう。
持ち出しありで不動産投資を行う際に大切なのは、計画性と信頼できるパートナー選びです。
ローン返済中とローン完済後のキャッシュフローを何パターンも想定して計算し、計画的に資金計画を立てましょう。ただ、机上の計画だけでは突発的なトラブルに対処できません。物件管理や集客面など、運営面でのサポートをしっかり行ってくれる不動産会社をパートナーに選ぶことをおすすめします。
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監修:小泉 由貴乃(レイビー編集長)
管理業務主任者、マンション管理士、3級ファイナンシャル・プランニング技能士